ARPAは、企業によってはARPU(Average Revenue Per User)とも呼ばれ、通常は1か月の期間で1アカウントが生み出す平均経常収益です。期間中の総収益を顧客数で割って算出します。ARPA = 総収益 ÷ 顧客数。新規契約時点の価格のみを測るASP(Average Sale Price)とは異なる指標です。
ARPAとは
Average Revenue Per Accountは、顧客1社が企業にもたらす金額を測る指標です。Average Revenue Per User(ARPU)やAverage Revenue Per Customer(ARPC)とも呼ばれます。
ARPAはなぜ重要なのでしょうか。端的に言えば、ARPAを理解することで価格モデルを設定・調整でき、顧客獲得コストの評価にも役立ちます。
ARPAは**ASP(Average Sale Price)**と混同しやすい指標です。ASPは関連はしますが別の指標で、顧客基盤全体ではなく新規契約だけを見ます。
| ARPA | ASP | |
|---|---|---|
| 測るもの | 今この瞬間の、顧客基盤全体の平均収益 | 新規顧客が初めて契約した時点で支払う平均価格 |
| 既存顧客を含むか | 含む。アップグレード、ダウングレード、更新も対象 | 含まない。初回購入のみ |
| 向いている用途 | 価格戦略、収益の質の把握、予測 | 営業チームの成果測定、案件規模のトレンド把握 |
ARPAの計算方法
顧客あたり平均収益を計算するには、対象期間の事業の総収益を、同じ期間の顧客数で割ります。言い換えれば、ARPAの式は 全顧客のMRRの合計 ÷ 顧客数 です。1社が複数のサブスクリプションを持っている場合は、それらをまとめて1顧客として数えたうえでARPAを算出します。無料プランや無料トライアル中の顧客は、分子となるMRRを生んでいないため対象外です。
言い換えると:ARPAは、期間中の総収益を、同じ期間の顧客数で割ったものです。
例
ARPAを計算する実際の例を見てみましょう。
顧客が5社あり、それぞれ月あたりの支払額が異なります。
- 顧客1と2は月100ドルを支払っています。
- 顧客3は月300ドルを支払っています。
- 顧客4と5は月500ドルを支払っています。
総収益は1,500ドル、同じ期間の顧客数は5社です。
1,500ドル(総MRR)÷ 5(顧客数)= ARPA 300ドル。
このシナリオでは、Average Revenue Per Accountは月300ドルになります。
ARPAの計算に含まれるものは
ARPAは本質的に2つの要素から成ります。月次経常収益(MRR)と、顧客数の合計です。
ただしMRRは、考慮すべきいくつかの要素で構成されています。
- MRR: 過去の期間に契約し、今もプロダクトに支払い続けている顧客に、当期に加わった新規契約を足したものです。
- アップグレード、アップセル、アドオン: より上位の価格帯に移った人、サブスクリプションを追加した人、主要プランとは別に課金される追加機能を利用している人です。
- ダウングレード: 上記の逆で、下位の価格帯に移ったために月額が下がった顧客です。
- Churned MRR: 対象期間にサブスクリプションを解約したアカウントが含まれます。
これらの要素は正確なARPA算出に不可欠です。MRRを見る時点ですでに織り込まれていますが、ARPAに影響することは意識しておくべきです。各要素を改善する手を打てば、全体の指標も動きます。
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ARPAに影響する要因
価格モデル
価格はあらゆるSaaS企業にとって最大の成長レバーです。2024年には約42%の企業が価格を変更しました。価格を定期的に見直すことで、競争力を保ち、顧客価値との整合性を維持できます。
チャーン率
価値の高いアカウントを失うとARPAは押し下げられます。エンゲージメントとサポートを強化してチャーンを減らせば、収益とARPAの両方を守れます。SaaS事業の典型的な月次チャーン率は3〜7%です。
拡大と縮小
アップセル、アドオン、シート数の増加は、新規顧客を1社も増やさなくてもARPAを押し上げます。逆にダウングレードや利用縮小は同じ速さでARPAを押し下げます。だからこそ、顧客数とチャーン率が変わらなくてもARPAは動くのです。NRRをARPAと合わせて見れば、その動きが拡大によるものか縮小によるものかがわかります。
ユーザーベース
事業のユーザーベースの規模と構成もARPAに影響します。ユーザーベースが大きい企業はセグメント別の価格設定が必要になることがあり、小さい企業はアップセルとクロスセルからより大きな恩恵を得られます。
ARPAと顧客生涯価値
顧客あたり平均収益と顧客生涯価値(LTV)の違いについては少し混乱があります。LTVは平均的な顧客が解約するまでに支払う総額を追う指標であり、顧客をどれだけ維持できているかを測ります。
ARPAは、価格設定、メッセージ、顧客に届くために使っているチャネルの有効性といった要因のパフォーマンスを評価するのに向いています。
BufferがARPAを伸ばして長期的な成長を維持した経緯をご覧ください。
Joel Gascoigne, CEO at Buffer I see ARPA as one of the components of MRR (ARPA * Customers = MRR). Within that formula, we consciously decided to ignore the “Customers” variable and focus entirely on the ARPA variable, to drive MRR.
良いARPAとは
良いARPAは、事業内容と、その事業が属するニッチや業界によって変わります。
どんな顧客を狙っているのかを考えるべきです。おもにネズミやウサギを追っているのであれば、ARPAは低くなって当然です。しかしクジラやゾウを狙っているのなら、ARPUが低いのは戦略が意図どおりに機能していないサインかもしれません。
| 当初の割り当て | ACVレンジへの換算 | MRRレンジ | |
|---|---|---|---|
| 🐀 | $100 ACV | <600 ACV | <$50 MRR |
| 🐇 | $1,000 ACV | $600 - $4,999 ACV | $50 - $417 MRR |
| 🦌 | $10,000 ACV | $5,000 - $49,999 ACV | $418 - $4166 MRR |
| 🐘 | $100,000 ACV | $50,000 - $499,999 ACV | $4,167 - $25,000 MRR |
| 🐋 | $1,000,000 ACV | >$300,000 ACV | >$25,000 MRR |
ARPAの最も良い使い方は
ARPAは、顧客から生み出している収益の質を示す優れた指標です。実践的な使い道をいくつか紹介します。
競合と比べる
ARPAは、同じような戦略をとる同業他社と比べて自社がどうなのかを手早く把握する方法です。異なる顧客セグメントを狙う企業同士の比較にはあまり向きません。狙うARPAは戦略によって変わるからです。
顧客セグメンテーションを改善する
プランの階層、案件規模、無料か有料かで顧客基盤を分ければ、各セグメントの状況や、価格・プロダクトのどこに手を入れるべきかが見えてきます。もっとも高価な階層にエンゲージメントの高いセグメントがいることは、それを軸に価格を組み立てられるというサインです。
獲得チャネルを評価する
顧客を獲得チャネル別にセグメント化し、各チャネルが生み出すARPAを比較しましょう。これはチャネルごとのCAC対LTV分析に近い作業で、マーケティング予算をどこに投じるべきかの判断を助けてくれます。
生み出している収益の質を評価する
投資家は、とくに若い企業について、ARPAが上向きに推移していることを期待します。ARPAの低下(とくに成熟した企業の場合)は、この先の問題を示唆している可能性があります。
It is useful to look at this for just the new customers booked in the month. Plot a trendline to show you the average price point that your new customers have chosen. David Skok, General Partner at Matrix Partners
収益を予測する
ARPAを使えば、収益をざっくりと素早く見積もれます。上半期に月次ARPA100ドルの顧客を500社獲得したなら、下半期も同程度の新規契約が期待できます。新しい施策を重ねる前の基準値を設定するのに役立ちます。
チャーンを予測する
特定セグメントでARPAが急に下がったら、不満の兆候である早期警戒サインになりえます。実際に解約が起きる前に手を打つ機会が得られます。
SaaSスタートアップはARR 100万ドルから1,000万ドルへどう成長するか
大多数のSaaSスタートアップは、サブスクライバー基盤を広げることでARR 100万ドルから1,000万ドルへ成長します。どのスタートアップでも成長の要素は2つだけです。サブスクライバーの成長と、ARPAの成長です。ほとんどはサブスクライバー基盤を増やして成長します。ごく一部(5%未満)は主にARPAを高めて成長します。
任意のアドオンや「アラカルト」の機能を提供して既存顧客に注力することは、ARPAを高め成長を後押しする助けになります。
ARPAが高いほどリテンションも強くなる傾向がある
ARPAが高くなるほど、企業はアップセルとクロスセルをはるかに多く行えます。これはネットリテンションを押し上げる傾向があります。3,500社のソフトウェア企業を対象にした2025年12月のChartMogul分析では、このパターンが幅広く成り立つことがわかりました。月額250ドルを超える価格帯の製品は、従来型のB2B SaaSと同水準(グロス・レベニュー・リテンション70%、ネット・レベニュー・リテンション85%)で顧客を維持していたのに対し、月額50ドル未満の製品ではグロス・レベニュー・リテンションが23%まで落ち込むケースもありました。
ARPAとその他のSaaS指標をトラッキングする
収益成長を推進することが目標です。だからこそ、セグメントやチャネル別の内訳とあわせてARPAを確実にトラッキングし、何が押し上げ・押し下げの要因になっているかに基づいて動くことが重要です。
ChartMogulはARPAやその先までトラッキングを支援します。今日からChartMogulを始めましょう。